時計塔のある建物のポルティコ部分
おや、こんな案内が。
「ロット、ベッリンゾーニ、サリンベーニ
修復中の場所のチンゴリの宝は、パラッツォ・ムニチパーレに置かれています。」
やはりここでいいようです。

建物の中に入ると受付のような小さな部屋があり、
そこで、ロットの作品はここにあるのでしょうか、と訊いてみると
ちょっと待ってね、と受付の男性は内線電話を掛けて、相手となにやら話した後、
私についてきてください、と言って案内してくれました。

展示室に着くと、別の男性がいて
「こんにちは、あなたからのメッセージに今朝返信しましたよ。」
と言うのでした。
実は、昨日の夕方、
「マチェラータのインフォで、金曜は開いていないと言われたけれども、
本当に開いていないのですか?
これを観たくて以前問い合わせをし、
28日は午前中開いていると返信をもらったので日本から観に来たのですが」
とメールを送ったのです。
そのメールを彼は今朝開けて返信したようです。

そして、
「私は、以前あなたに開いていると返信しました。
嘘はつきません。
どうぞゆっくりご覧ください。」と。

そこは、6m四方ぐらいの小さな部屋でした。
壁にその祭壇画が飾られ、それを鑑賞するのによい位置に
木製の椅子が4、5脚横に並べられているだけ。
そこで私は独り占めで鑑賞できるのでした。
パソコンの画面でこの作品を初めて観たときに、
画面上半分の、まるでクリスマスツリーのオーナメントが飾られているような構図に惹かれました。
下半分の、幼子を抱き、ロザリオを持つ手を伸ばしている聖母の動きや
聖母を囲む人々、
その下で花びらを撒いている天使たちもなんと素敵なのでしょう。
初めはその程度。

ちょっと調べてみたところ分かったことがいくつもあります。

聖母は、聖ドミニクスにロザリオを与えているのだそうです。
聖ドミニクスはスペインの国家聖人の一人で、ドミニコ会の創立者でもあるそうで、
聖母マリアに対する独特な祈りである「ロザリオの祈り」は、
彼によって創始されたと伝えられているのだそうです。

ロザリオは、祈りの回数を記憶するために考案されたもので、
キリストと聖母の喜び、悲しみ、栄光の玄義を黙想しながら天使祝詞を150回唱え、
10回を一連、五連を一環として三環で終わるように考えられているのだそうで、
一連ごとに一玄義を黙想するため、「ロザリオの十五玄義」と言われるそうです。
(玄義とは、キリスト教で、啓示によってのみ示される信仰の奥義だそうです。)

そして上半分のオーナメントのような円の中には
「ロザリオの玄義」と呼ばれるキリストの誕生から死、
そして復活までが順に描かれていて
それらはすべて、祈りの際に瞑想すべき場面なのだとのこと。

本物を観たい、近くでつぶさに観てみたい、そんな思いが強くなり、
昨冬、アンコーナ滞在して、レカナーティやイエージを訪れてロット作品を観て、
残念ながらチンゴリに行きそびれたので、
観たい!という思いはより強くなったのでした。

その絵が、目の前にあり、間近でじっくりと観られる幸せ。
インターネットの写真ではよく見えなかったこの絵の背景は野ばらの木で、
その手前に木を組んであって円形のものが取り付けられている、
ということなのでした。
ちらちらとあちこちに小さな野ばらが咲いています。
聖母子
元気のよい幼児キリストから祝福を受ける
チンゴリのまちの都市模型を掲げている守護聖人サンテスペランツィオ
野バラの花びらを撒く天使たち。
円形の中に描かれた「ロザリオの玄義」は、受胎告知から始まっています。
下の段の5場面は、受胎告知に始まる「喜びの玄義」と呼ばれるものだそうです。
中段は、オリーヴ山の祈りから磔刑に至る「悲しみの玄義」。
中段の5つ目の「キリストの磔刑」
そして上段は、復活以後の「栄光の玄義」。
最初がキリストの復活。
近くで観て、離れて観て、立って観て、座って観て、
とても心地よい時間を過ごしました。

展示室の天井。
紋章は、このまちのなかの各地区の物でしょうか。
他にも絵画が飾られていました。
フレスコ画も。
ベッリンゾーニの作品。
そしてこれは、サリンベーニの作品だそうです。
お礼を言って、外に出ました。